ハルシネーション(AIの幻覚)とは?
別の呼び名:Hallucination、AIの幻覚
1分で解説
ChatGPT などのAIが、まちがった内容を、本当らしく自信ありげに答えてしまうことです。
AIは、たくさんの文章を読んで「この言葉の次には、この言葉が来やすい」という続き方を覚え、次に来そうな言葉を選びながら文を作ります。そのため、知らないことを聞かれても、それらしい文がすらすら出てきます。日付や数字、めったに書かれていない事実でよく起き、無い研究や判決を挙げてしまうこともあります。
では、なぜ「分かりません」と言わないのでしょう。OpenAI(ChatGPT を作った会社)などの研究者たちは2025年の論文で、AIの成績をくらべるテストの多くが、正解だけに点をあげるからだと考えています。当てずっぽうでも答えるほうが点が上がるので、そのクセが残るというのです。OpenAI は、2025年の GPT-5 ではかなり減ったと発表していますが、まだ起きるとも書いています。
よくある思い込み
「AIは、わざとうそをついている」
まちがったことを、自信ありげに言う、というところは合っています。でも、上の論文の研究者たちは、ハルシネーションを「わざと」ではなく、知らないときに当てずっぽうで答えてしまう「まちがい」として説明しています。むずかしい試験問題で、自信がないのに答えを書いてしまう生徒のようなものです。ただし、知っているはずのことでも、前の答えに合わせて、まちがいを重ねてしまう例もあります。
図で解説
たとえるなら
空らんを作らない、テストの答え方
選択式のテストで、答えが分からない問題があったとします。空らんにすれば、必ず0点。当てずっぽうで書けば、当たるかもしれません。まちがえても点が引かれないなら、全部うめたほうが得です。
AIの成績をくらべるテストの多くも、これと同じ採点です。だから、分からないときも答えるクセが残りやすい、というのが上の論文の考えです。しかもAIの当てずっぽうは、「秋ごろ」のようにぼかさず、「9月30日」のように、自信ありげで細かい答えになりがちです。
ただし、たとえが合わないところもあります。人は、学校の外で、でたらめを言って恥をかきながら、「分かりません」と言う大切さを学びます。また、AIのまちがいは、いつも「迷ったから」とは限りません。AIの中では、「この名前は知っている」という合図がまちがって出て、知らないのに答えてしまう例も見つかっています。
ポイント解説
なぜ「分かりません」と言わないの?
理由は、大きく3つあります。「知らないことが、どうしても出てくる」「AIの中のしくみ」「テストの採点のしかた」です。1つめ。英単語のつづりのように、何度も出てくる決まりは覚えられます。でも、有名でない人の誕生日は、学ぶ文章に1回しか出てこないこともあり、ほかの事実から当てることもできません。
2つめ。Claude というAIを作っている会社 Anthropic が2025年、自分たちのAIの中を調べると、ふだんは、答えるのを止めるブレーキがかかっていました(仕上げの訓練で身につけたものです)。だから、まったく知らない名前の人のことを聞かれると、「答えるための情報が無い」と言います。よく知っている名前が出ると、AIの中に「この名前は知っている」という合図が出て、それがブレーキを外すので、答えます。ところが、名前に見覚えだけあって中身を知らないときにも、この合図がまちがって出てブレーキが外れ、もっともらしい作り話を始めることがある、と Anthropic は説明しています。
3つめ。AIは、正解だけに点をあげるテストで良い点を取るように仕上げられるので、当てずっぽうのクセが残る、というのが、1分で解説で紹介した論文の考えです。OpenAI が2025年に発表した、短い事実を答える問題集「SimpleQA」の結果(Web検索なし)では、「分かりません」をよく言うAIは、正解22%・まちがい26%・答えを控えた52%でした。ほとんど言わないAIは、正解24%・まちがい75%・控えた1%で、正解はほぼ同じなのに、まちがいは3倍近くでした。正解の割合だけで順位をつけると、まちがいの多いAIのほうが上になってしまいます。
どんなときに起きやすいの?
OpenAI の ChatGPT の説明ページは、ハルシネーションの例として、言葉の意味・日付・事実のまちがい、無い研究や、言っていない言葉の引用を作ること、あいまいな質問やこみ入った質問に自信たっぷりに答えること、を挙げています。とくに、誕生日のように、決まりから当てられず、めったに書かれていない事実で起きやすくなります。
AIが学んだ後に起きた出来事も苦手です。AIの知識は学んだ時点で止まっているので、Web検索などを使わないと、その後のことは答えに入りません。昔は正しかった答えを出したり、作り話をしたりすることがあります。
渡した文章とちがうことを書くのも、ハルシネーションに入れることがあります。たとえば、資料のまとめを頼んだのに、資料に無いことが混ざる場合です。これまでの研究をまとめた論文では、本当の事実とちがうものと、頼んだことや渡した文章からずれたり、話のつじつまが合わなかったりするものの、大きく2つに分けています。
使うときは、どうすればいい?
1つめ。誕生日のように答えが1つに決まる質問なら、同じ質問を何回か、別々に聞いてみます。AIが知っていることなら答えはそろいやすく、作り話なら聞くたびに食い違いやすい、という研究があります。ただし、そろっても正しい証拠にはなりません。おすすめや物語を頼むときのように、答えが毎回ちがってふつうの質問もあります。
2つめ。AIに「それ本当?」と聞き返しても、確かめたことにはなりません(下の裁判の例)。日付・数字・引用は、元の資料で確かめます。AIが「ここに書いてある」と資料を挙げたら、リンクを開いて、その資料が本当にあるか、本当にそう書いてあるかを見ます。OpenAI も Anthropic も、大事な情報は確かめるよう呼びかけています。
3つめ。頼み方を工夫します。「分からなければ、分からないと言っていい」と伝えると、まちがった情報を大きく減らせる、と Anthropic の説明書は書いています。長い資料について聞くときは、まず資料から言葉どおりに抜き出してもらい、それをもとに答えてもらうのも手です。それでも、ハルシネーションは完全にはなくならない、とも書いています。
本当に困ったことは起きたの?
起きています。2023年、アメリカのニューヨークの裁判で、弁護士が出した書類に、存在しない判決が、もっともらしい引用文ごと並んでいました。ChatGPT が作ったものでした。弁護士が ChatGPT に「これは本当にある判決か」と聞き返すと、ChatGPT は「実在する」と答え、法律の調べもの用のサービスで見られる、とまで言いました。
裁判所は2023年6月の命令で、弁護士たちが存在しない判決を出し、疑いを向けられた後もそれを支え続けた、として、弁護士たちと事務所に、合わせて5000ドルの支払いを命じました。命令は、信頼できるAIの道具を手助けに使うこと自体は、何も悪くないが、書類が正確かを確かめるのは弁護士の役目だ、と書いています。
ハルシネーションは、なくせるの?
まだ、なくせていません。OpenAI は、2025年の GPT-5 では、とくに考えてから答えるときにかなり減ったと発表していますが、まだ起きる、とも書いています。Web検索を使えば減らせますが、それも万能ではありません。検索で確かな答えが見つからないときも、正解だけに点をあげるテストでは、当てずっぽうが得なままだからです。
また OpenAI は、どんなにAIが賢くなっても、正解の割合は100%にはならない、と書いています。情報が無いなどの理由で、答えが決められない質問があるからです。でも、「ハルシネーションは、どうしても起きる」という考えには反対で、自信がないときに「分かりません」と答えれば、まちがいは防げる、としています。そのために、テストの採点のしかたを変えよう、と呼びかけています(会社の研究者の考えです)。
一度まちがえると、どうなるの?
まちがいを、別のまちがいで支えてしまうことがあります。2023年の研究で、AIが「9677は素数(1とその数でしか割り切れない数)ですか」と聞かれ、本当は素数なのに「素数ではない」と答え、まちがった計算を理由として書いた例があります(「13×745=9677」と書きましたが、13×745は9685です)。
同じAIに、その理由の部分だけを別の質問にして確かめさせると、3種類の問題で、87%のまちがいを見抜けました。別に聞かれれば分かることを、まちがえていたのです。研究者は、最初の答えとつじつまを合わせる形で起きる、と考えています。転がる雪玉が大きくなるように、1つのまちがいが次のまちがいを呼ぶので、「ハルシネーションの雪だるま」と呼んでいます。
なぜ「幻覚」と呼ぶの? ほかの意味は?
もともと「幻覚(ハルシネーション)」は、医学や心理学の言葉で、そこに無いものが見えたり聞こえたりすることです。病気や薬のせいで起きることがあります。AIの話で出てくるハルシネーションは、これとは別の意味です。
AIの意味の「hallucinate」は、2023年、イギリスのケンブリッジ英語辞典に新しく加わり、その年の「今年の言葉」に選ばれました。辞典は「AIがハルシネーションを起こすとは、まちがった情報を作り出すこと」と説明しています。ただ、AIは何かを「見て」いるわけではなく、人の感じる幻覚とはまったくちがう、と、1分で解説で紹介した論文も書いています。英語では、作り話をするという意味の「confabulation」と呼ばれることもあります。
確認問題
問1AIの中を調べた研究で、そのAIは、まったく知らない名前の人について聞かれると、どうしていた?
答えと解説
答え:C 答えるための情報が無い、と言っていた
調べたAIは、ふだんは、答えるのを止めるブレーキがかかっていて、まったく知らない名前の人のことは「答えるための情報が無い」と言っていました。作り話が始まることがあったのは、名前に見覚えはあるのに中身を知らないときです。「この名前は知っている」という合図がまちがって出て、ブレーキが外れてしまいます。
問2OpenAI が2025年に発表した「SimpleQA」の結果で、「分かりません」をほとんど言わないAIは、よく言うAIと比べてどうだった?
答えと解説
答え:A 正解は同じくらいで、まちがいは3倍近くだった
正解の割合は24%と22%で、ほぼ同じでした。でも、まちがいの割合は75%と26%で、3倍近くです。正解の割合だけで順位をつけると、まちがいの多いAIのほうが上になってしまいます。
問3AIに、ある人の誕生日を、別々に3回聞く。このページでは、何のため?
答えと解説
答え:B 答えが食い違うかどうかを見て、作り話に気づくため
誕生日のように答えが1つに決まる質問なら、知っていることは答えがそろいやすく、作り話は食い違いやすい、という研究があります。ただし、そろっても正しい証拠にはならないので、多かった答えを正解とは決められません。何度も聞き返しても、確かめたことにはなりません。大事なことは、元の資料で確かめましょう。
関連用語
参考文献と確かめ方
- Kalai ほか「Why Language Models Hallucinate」(OpenAI・ジョージア工科大学、arXiv、2025年9月)
- OpenAI「Why language models hallucinate」(2025年9月5日)
- OpenAI「GPT-5 System Card」(2025年8月13日)の表8「SimpleQA (no web)」
- OpenAI ヘルプ「Does ChatGPT tell the truth?」
- Anthropic「Tracing the thoughts of a large language model」(2025年3月27日)
- Anthropic の説明書「Reduce hallucinations」
- Huang ほか「A Survey on Hallucination in Large Language Models」(arXiv、2023年11月)
- Manakul ほか「SelfCheckGPT」(arXiv、2023年3月)
- Zhang ほか「How Language Model Hallucinations Can Snowball」(arXiv、2023年5月)
- アメリカ・ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所「Mata v. Avianca, Inc.」の制裁の命令(2023年6月22日。CourtListener の写し)
- ケンブリッジ大学「Cambridge Dictionary names ‘Hallucinate’ Word of the Year 2023」
このページは、上の資料をもとにAIが書き、書いたAIとは別のAIが、資料の本文と照らして確かめました(2026年11月6日)。理学の修士号と、高校理科の教員免許を持つ人も読んで確かめてから出しています。数字は、その時点のものです。わかりにくかったところ、誤りのご指摘、解説してほしい用語は、[email protected] へお寄せください。