AGI(汎用人工知能)とは?
別の呼び名:Artificial General Intelligence、汎用AI、人間レベルのAI
1分で解説
1つのAIで、いろいろな種類の頭を使う仕事を、人と同じくらい、またはそれ以上にこなせるAIのことです。
「汎用」は、いろいろなことに使える、という意味です。囲碁のAIのように、決まった仕事だけが得意なAIは「特化型」と呼ばれます。ChatGPT のようなチャットAIは、作文も要約もプログラム作りもします。でも、2023年のチャットAIを調べた研究者たちは、ほとんどの仕事では、まだその仕事ができる人に届かない、と見ていました。
ただし、決まった1つの定義はありません。たとえば OpenAI(ChatGPT を作った会社)は2018年の憲章(会社の目的と約束をまとめた文書)で、「経済的に価値のある仕事のほとんどで人を上回る、高度に自律したシステム」と書きました(自律は、人の指示を待たずに自分で動くこと)。もうできたのか、いつできるのかも、研究者や会社によって、考えや予測が大きく分かれています。
よくある思い込み
「AGIは、人のような心を持ったロボットのこと」
人のように何でもこなす、というところは近いです。でも、多くの定義は「何ができるか」で決めていて、心があるかどうかは問いません。Google DeepMind(Google のAIの研究所)の研究者たちの論文は、AGIに意識(自分で感じる心)は要らず、体を使う仕事ができることも、必ずしも要らない、としています。心を持つかどうかは、「強いAI」という別の問いです。
図で解説
たとえるなら
1教科の名人と、どの教科もできる生徒
計算ドリルなら、だれにも負けない生徒がいるとします。でも、国語や理科のテストは、受けることさえできません。この生徒は「計算の名人」ではあっても、「どの教科もできる生徒」ではありません。囲碁のAIのような特化型AIは、これに近い存在です。
AGIは、どの教科でも、初めて習う教科でも、ふつうの生徒と同じくらい、またはそれ以上にできる生徒にあたります。大事なのは、1つの教科の点の高さより、できることの幅の広さと、新しいことを覚える力です。
ただし、たとえが合わないところもあります。今のチャットAIは、得意と苦手がでこぼこです。AIを段階に分けた Google DeepMind の研究者たちは、短い作文は一人前でも、数学や、事実の正しさが大事な仕事では、まだ芽生えの段階だと見ていました。また、「ふつうの生徒と同じくらい」の線を何点に引くかは、人によってちがいます。AGIの定義が1つに決まらないのは、このためでもあります。
ポイント解説
今のAIと、どこがちがうの?
多くのAIは、決まった仕事のために作られ、その仕事だけが得意です。これを「特化型AI」(英語では narrow AI)と呼びます。Google DeepMind の研究者たちの「AGIの段階」の分け方では、囲碁のAI「AlphaGo」は、囲碁を打てる大人の99%より上手な段に入りますが、AlphaGo に作文はできません。AGIの「汎用」は、その逆で、1つのAIが幅広い仕事をこなすことです。
ChatGPT のようなチャットAIは、作文・要約・プログラム作りなど、幅広い仕事をします。そこで Google DeepMind の研究者たちは、2023年の ChatGPT などを「汎用」のAIに数えました。ただし段は、いちばん下の「芽生え」です。短い作文や簡単なプログラムでは一人前でも、数学や、事実の正しさが大事な仕事など、多くの仕事では、まだ芽生えの段階だから、というのが理由です(どのAIをどの段に当てはめるかは、おおよそだと断っています)。
同じ論文は、AGIに大事な力として、新しい仕事を覚える力や、分からないときに人に聞いたり、助けを求めたりできる力を挙げています。一方、物を運ぶような体を使う仕事は、できれば幅は広がるけれど、AGIと呼ぶのに必ずしも要らない、としています。
決まった定義はあるの?
ありません。人や会社によって、何の仕事で比べるのか、人と同じくらいでいいのか、人を上回る必要があるのかが、ちがいます。
OpenAI は2018年の憲章(会社の目的と約束をまとめたもの)で、AGIを「経済的に価値のある仕事のほとんどで人を上回る、高度に自律したシステム」と書きました。お金になる仕事で比べ、人を「上回る」としています。Google DeepMind は2025年のブログで、「ほとんどの頭を使う仕事で、少なくとも人と同じくらいできるAI」と書いています。こちらは、人と「同じくらい」です。
Google DeepMind の研究者たちの論文「Levels of AGI」(2023年)は、それまでの9つの考え方を比べたうえで、「できた・まだ」の1か所で区切らず、自動運転の「レベル」のように段階で考えようと提案しました。AIを使う段は、いちばん下の「芽生え」(慣れない人と同じか少し上)から、いちばん上の「人を超える」(すべての人より上)までの5段です。Anthropic(AIの Claude を作る会社)のトップのダリオ・アモデイは、AGIは、SFのイメージや大げさな宣伝がまとわりついた、あいまいな言葉だとして、「強力なAI」という言葉を使っています。
AGIは、もうできたの?
意見が分かれています。2023年、Microsoft の研究者たちは、開発中の GPT-4(OpenAI のAI)を調べた論文で、「初期の(まだ不完全な)AGIと見ることもできる」と書きました。同じ年、Google の幹部(バイスプレジデント)ブレーズ・アゲラ・イ・アルカスと、計算機科学者のピーター・ノーヴィグは、「AGIはもう来ている」という題の文章を書きました。いちばん大事な「汎用であること」は、もうできた、という考えです。2人も、欠点が多いことは認めています。
一方、「Levels of AGI」の論文は、チャットAIを、汎用の5つの段のいちばん下に置きました。Microsoft の論文も、もっと深いAGIに進むには、「次の言葉を当てる」のとはちがう、新しいやり方が要るかもしれない、と書いています。もうできたかどうかは、どの定義を使うかで、答えが変わります。
いつできるの?
分かりません。予測は、人によって大きくちがいます。2023年10月、AIの研究者2,778人に聞いたアンケートでは、「機械だけで、すべての作業を、人より上手に安くできる」見込みは(このアンケートは「AGI」という言葉ではなく、この形で聞いています)、全体のまとめで、2027年までに10%、2047年までに50%でした。1年前の調査より13年早くなっています。ところが、「すべての職業が機械でできる」見込みが50%になるのは、2116年でした。
アンケートをまとめた人たちは、同じ問いでも、人によって答えが大きくちがったこと、予測はもともと難しく、AIの研究者が未来を当てるのが特に上手なわけではないことも書いています。
AIを作る会社のトップには、もっと早いと見る人や、作り方はもう分かったと言う人がいます。アモデイは2024年、「強力なAI」は「早ければ2026年にも来るかもしれないが、もっとずっと長くかかる道すじもある」と書きました(すぐにはできないと疑う人は多く、決してできないと疑う人もいる、と書いたうえでの予測です)。OpenAI のトップのサム・アルトマンは、2025年のはじめのブログで、「これまで考えられてきた意味でのAGIを、どう作ればいいか分かったと確信している」と書いています。Google DeepMind の研究者たちも2025年の論文で、「AGIの段階」のレベル4(その仕事ができる大人の99%より上)にあたるAGIを念頭に、そうした強力なAIが「いつできるかはとても不確かだが、2030年までにできることもありうる」としています。どれも予測や考えで、決まった未来ではありません。
「強いAI」や「超知能(ASI)」とは、どうちがうの?
「強いAI」は、哲学者ジョン・サールが1980年の論文で使った言葉です。サールの言う強いAIは、「正しいプログラムを入れたコンピュータは、本当に心を持ち、本当に分かっている」という考えで、サール自身はこれに反対しました。つまり、「何ができるか」ではなく、「中に心があるか」の問いです。
AGIという言葉を本の題にしたAIの研究者ベン・ゲーツェルも、強いAIには、AIの哲学で決まった意味があるので、その言葉は使わなかった、と書いています。ただし、発明家のレイ・カーツワイルは、「強いAI」を「特化型AI」の反対の言葉として使っていた、ともゲーツェルは書いています。
「超知能」(ASI。人工超知能)は、AGIのさらに先です。哲学者ニック・ボストロムは1998年の論文で、「科学の創造性や、知恵、人づきあいの力も含め、ほぼすべての分野で、いちばん賢い人の頭よりはるかに賢い知能」と説明しました。「AGIの段階」の分け方では、いちばん上のレベル5(すべての人を上回る)の汎用のAIを、超知能と呼んでいます。
なぜ安全が心配されるの?
人のように幅広く働けるAIは、良いことにも悪いことにも使えて、OpenAI の定義にもあるように、人の指示を待たずに動く「高度に自律した」ものになるかもしれないからです。Google DeepMind の研究者たちは2025年の論文で、AGIの危険を4つに分けました。人がわざと悪いことに使う「悪用」、AIが、作った人の意図に反すると分かっていながら、害になることをする「目的のずれ」、AIが、害になると知らずに害を起こす「まちがい」、たくさんの人や会社、AIが関わり合う中で起き、だれか1人やAI1つを直すだけでは防げない「しくみの危険」です。
同じ論文は、人類を大きく傷つけるような重い害を特に重く見ていて、人類をずっと滅ぼしてしまう危険は、そのはっきりした例だとしています。2023年には、AIの研究者や、OpenAI・Google DeepMind・Anthropic のトップたちが、「AIによる絶滅の危険を減らすことは、パンデミックや核戦争のような、社会全体にかかわる危険と並んで、世界で優先すべきことだ」という1文の声明に名前を連ねました。
どれも、会社や研究者の考えです。AIがAIの研究を進めて、改良がくり返されるという心配は、「再帰的自己改善」のページで説明しています。
言葉は、いつから? ほかの意味は?
Google DeepMind の研究者たちの論文によると、「artificial general intelligence」という言葉が初めて使われたのは、1997年、マーク・ガブルッドが軍事の技術について書いた記事です。
広まったのは2000年代のはじめです。AIの研究者ベン・ゲーツェルによると、2002年ごろ、人と同じかそれ以上の幅広い力を持つAIについての本を、カシオ・ペナチンと作っていて、題に困っていたとき、前にゲーツェルのもとで働いていたAIの研究者シェーン・レッグが、この言葉を考えてくれたそうです。上の論文は、レッグとゲーツェルが2001年に、コンピュータの研究者の間にこの言葉を広めたとしています(年が少しずれています)。レッグは、その論文の著者の1人でもあります。
なお、アメリカの税金の話で「AGI」と言えば、「調整後総所得(Adjusted Gross Income)」のことです。アメリカの国税庁(IRS)は、すべての収入から、決まった差し引きをした額、と説明しています。AIの話の AGI とは関係ありません。
確認問題
問1Google DeepMind の研究者たちは、2023年の ChatGPT などを、「AGIの段階」のどこに置いた?
答えと解説
答え:A 汎用のAIの、レベル1(芽生え)
研究者たちは、2023年の ChatGPT などを汎用のAIに数え、段は、いちばん下のレベル1(芽生え)に置きました。短い作文や簡単なプログラムでは一人前でも、数学や、事実の正しさが大事な仕事など、多くの仕事では、まだ芽生えの段階だ、と見たからです。汎用のAIで、レベル2より上に入るものは「まだ」です。
問22023年に、AIの研究者2,778人に聞いたアンケートで、「機械だけで、すべての作業を、人より上手に安くできる」見込みが50%になる年は?
答えと解説
答え:C 2047年
2023年の調査では2047年で、1年前の調査の2060年より13年早まりました。2116年は、「すべての職業が機械でできる」と聞いたときの年です。よく似た問いなのに、聞き方で69年もちがいました。
問3サールが1980年に使った「強いAI」という言葉が、問うのは?
答えと解説
答え:B AIが、心を持ち、ものごとを分かっているか
サールの言う強いAIは、「正しいプログラムを入れたコンピュータは、本当に心を持ち、本当に分かっている」という考えで、「中に心があるか」を問います。体を使う仕事は、「Levels of AGI」の論文が、AGIに必ずしも要らないとした力です。人の指示を待たずに自分で動くことは、OpenAI の定義の「自律」にあたります。どちらも、強いAIの問いではありません。サール自身は、強いAIの考えに反対しました。
関連用語
参考文献と確かめ方
- Morris ほか「Levels of AGI for Operationalizing Progress on the Path to AGI」(Google DeepMind、ICML 2024。arXiv、2023年11月。2025年9月の第5版)
- OpenAI「OpenAI Charter」(2018年)
- Google DeepMind「Taking a responsible path to AGI」(2025年4月2日)
- Shah ほか「An Approach to Technical AGI Safety and Security」(Google DeepMind、arXiv、2025年4月)
- Grace ほか「Thousands of AI Authors on the Future of AI」(arXiv、2024年1月)
- Bubeck ほか「Sparks of Artificial General Intelligence: Early experiments with GPT-4」(Microsoft Research、2023年3月)
- Blaise Agüera y Arcas・Peter Norvig「Artificial General Intelligence Is Already Here」(Noema、2023年10月10日)
- Dario Amodei「Machines of Loving Grace」(2024年10月)
- Sam Altman「Reflections」(2025年1月)
- John R. Searle「Minds, Brains, and Programs」(Behavioral and Brain Sciences 第3巻、1980年)
- Nick Bostrom「How Long Before Superintelligence?」(1998年)
- Ben Goertzel「Who coined the term “AGI”?」(2011年8月28日)
- Center for AI Safety「Statement on AI Risk」(2023年)
- アメリカ国税庁(IRS)「Definition of adjusted gross income」
このページは、上の資料をもとにAIが書き、書いたAIとは別のAIが、資料の本文と照らして確かめました(2026年11月7日)。理学の修士号と、高校理科の教員免許を持つ人も読んで確かめてから出しています。数字は、その時点のものです。わかりにくかったところ、誤りのご指摘、解説してほしい用語は、[email protected] へお寄せください。