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トランスフォーマー(AIのしくみ)とは?

別の呼び名:Transformer、トランスフォーマーモデル

用語解説 ・ 確かめた日 2026年11月8日 ・ 読む 13分

1分で解説

文の中の言葉どうしが、どれくらい関係しているかを、全部の言葉を一度に見比べて計算する、AIのしくみ(ニューラルネットワークの作り方)のことです。

2017年に、Google の研究者たちが論文「Attention Is All You Need」で発表しました。たとえば「動物は道を渡らなかった。それは疲れすぎていたから」の「それ」が動物のことだと分かるには、ほかの言葉を見る必要があります。この、どの言葉をどれだけ見るかの計算を「アテンション(注意)」と呼びます。

前のしくみ(RNN)は、文を1語ずつ順に読んだので、1つの文の中の計算を、同時に進められませんでした。トランスフォーマーは同時に計算できるので、学習が速く進みます。今の大規模言語モデル(LLM)でいちばん広く使われている作り方で、ChatGPT の GPT の T も Transformer の T です。

よくある思い込み

「トランスフォーマーは、文を前から1語ずつ、順番に読んでいく」

半分は合っています。ChatGPT のように文を書くときは、1トークン(AIが文を区切る単位)ずつ書き、書いた分を入力に足して、次の1つを出します。でも、読むときのしくみは違います。前のしくみ(RNN)は、文を左から右へ1語ずつ読み、前の語の計算が終わるまで、次の語へ進めませんでした。Google は2019年の説明で、トランスフォーマーを「言葉を1つずつ順に扱うのではなく、文の中のほかの全部の言葉との関係の中で扱うモデル」と書いています。言葉どうしの関係を同時に計算できるので、学習を速く進められます。

図で解説

アテンション(注意)を表す図(例文は、Google の2017年の紹介から。線の太さは、このページで作った例)。題「“it” は、どの言葉を見る?」。上に例文「The animal didn't cross the street because it was too ___.」と訳「動物は道を渡らなかった。それ(it)が、とても___だったから」。左の枠「too tired(疲れすぎ)」:下の「it」から、上の「animal(動物)」へ太い実線と「強く見る」、「street(道)」へ細い点線と「少し見る」。その下に「it = 動物」。右の枠「too wide(広すぎ)」:「it」から「street(道)」へ太い実線と「強く見る」、「animal(動物)」へ細い点線と「少し見る」。その下に「it = 道」。いちばん下の帯:どの言葉をどれだけ見るかを、文ごとに計算する(アテンション)。
英語の “it” が何を指すかは、最後の1語で変わります。「疲れすぎ」なら動物、「広すぎ」なら道です。トランスフォーマーは、“it” とほかの言葉との関係の深さを数で比べ、関係の深い言葉を強く見ます(太い実線)。Google は2017年の紹介で、学習したモデルで “it” が向ける注意が、2つの文で動物と道に分かれる様子を示しました。フランス語では、動物と道で “it” の訳(il と elle)が変わるので、正しく訳すにはこれが要ります(線の太さは、このページで作った例)。
1語ずつ読むやり方と、一度に見比べるやり方を比べる図(例の文は、このページで作った例)。題「1語ずつ順に? それとも、一度に?」。左の「前のしくみ(RNN)」:「犬が」「骨を」「くわえ」「走った」の4つの言葉が、矢印で1列につながり、上に①〜④の順の番号。矢印の下に「→ 前の結果を、次の語へ渡す」。その下に「前の語が終わるまで、次へ進めない」「「犬が」と「走った」は3歩はなれる」。右の「トランスフォーマー」:同じ4つの言葉の、どの2つも曲線でつながる(全部で6本)。上に「全部の線を、同時に計算」。下に「→ どの2語も、線1本でつながる」「全部の言葉を、一度に見比べる」「「犬が」と「走った」も1歩」。いちばん下の帯:同時に計算できるので、学習が速く進む(2017年の論文)。
左の前のしくみ(RNN)は、1語ずつ読んで、前の結果を次の語へ渡します。次の語は前の語を待たなければならず、離れた言葉をつなぐにも何歩もかかります。右のトランスフォーマーは、どの2つの言葉の組み合わせも、一度に見比べます(曲線)。どの2語も1歩でつながり、計算を同時に進められるので、学習が速くなりました(文は、このページで作った例)。
文を書くトランスフォーマー(GPT など)の流れの図(言葉と確率の数は、このページで作った例)。題「層を重ねて、次の言葉を当てる」。左の「入れた言葉」:「今日」「は」「いい」と「+何番目かの印」→ 真ん中の「層を何段も重ねる」:重なった板の、いちばん前の板に「①ほかの言葉を見る」「②言葉ごとに計算する」。その下に「①がアテンション(注意)」「2017年の翻訳は6段、GPT-3は96段」→ 右の「次の言葉の確率」:横棒で「天気 60%」「日 25%」「気分 5%」と「例:「天気」を選ぶ」。右から左へ戻る矢印に「選んだ言葉を後ろに足して、くり返す(1トークンずつ書く)」。いちばん下の帯:GPT の T は、Transformer(トランスフォーマー)の T。
入れた言葉は、数の並びにして何番目かの印を足し、同じ形の層を何段も通します。1つの層では、①アテンションでほかの言葉の情報を取り込み、②言葉ごとに同じ計算をします。最後に、次に来る言葉ごとの確率を出し、1つを選んで後ろに足し、また初めからくり返します。こうして1トークンずつ書きます。層は、2017年の翻訳のモデルで6段(読む側と書く側に6段ずつ)、2020年の GPT-3 で96段でした(言葉と確率は、このページで作った例)。

たとえるなら

伝言ゲームと、みんなで見渡す話し合い

前のしくみ(RNN)は、伝言ゲームに似ています。列の1人目から順に、聞いた話をまとめて、次の人へ伝えます。前の人が終わるまで、次の人は始められません。列が長いと、はじめのほうの話は、何人も通るうちに伝わりにくくなります。

トランスフォーマーは、全員が同じ紙を見ながら、いっせいに話し合うやり方に近いです。1人ひとりが「自分にとって大事なのは、だれの話か」を同時に確かめ、遠くの席の人の話にも、直接耳を傾けられます。全員が同時に動けるので、早く終わります。

たとえが合わないところもあります。トランスフォーマーの「注意」は、計算で出す数で、人が気持ちを向けるのとは違います。また、話し合いの人数が2倍になると、だれとだれの組み合わせは、およそ4倍に増えます。長い文ほど計算が重くなるのは、このためです。

ポイント解説

アテンション(注意)は、何を計算しているの?

Google の機械学習の講座は、文の中で言葉どうしを見比べるアテンション(セルフアテンション)が、それぞれの言葉について、「ほかの言葉は、この言葉の読み取りに、どれくらい影響するか」を問う、と説明しています。答えは数で出て、関係の深い言葉ほど大きくなります。

AIの中では、言葉を、たくさんの数を並べたもの(数の並び)で表します。2017年の論文では、それぞれの言葉の数の並びから、3つの数の並びを作ります。「探しているもの」にあたるクエリ(query)、「見出し」にあたるキー(key)、「中身」にあたるバリュー(value)です。ある言葉のクエリを、全部の言葉のキーと比べ、よく合うものほど大きな重みを付けて、その重みで中身を混ぜ合わせます。こうして、まわりの言葉の情報を取り込んだ、新しい数の並びができます。

Google は2017年の紹介で、“I arrived at the bank after crossing the river.”(川を渡ってから、bank に着いた)という例を挙げています。bank には「銀行」と「川岸」の2つの意味があります。トランスフォーマーは “river”(川)にすぐ注意を向けることを学べるので、川岸のほうだと1歩で決められる、という説明です。

この見比べは、何通りも並べて行います(「マルチヘッド」)。2017年の論文の基本のモデルは8通り、大きなモデルは16通りでした。論文の付録には、文の組み立てに関係しているように見えるものや、“its” などの言葉が何を指すかを解いているように見えるものの例が載っています。

前のしくみ(RNN)と、何がちがうの?

2017年のころ、翻訳のように、ある文を別の文に変える仕事で主に使われていたのは、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)や畳み込みニューラルネットワークでした。成績のよいものは、そこにアテンションも組み合わせていました。論文の題「Attention Is All You Need」は「必要なのはアテンションだけ」という意味で、論文は、RNN も畳み込みも使わず、アテンションだけで作ったしくみを出しました。書いたのは、Google Brain と Google Research の研究者たちと、トロント大学の1人の、合わせて8人です。

RNN は、文を左から右へ(または右から左へ)1語ずつ読み、それまでの計算の結果を、次の語へ渡していきます。論文は、この順番にしか進めない性質のせいで、1つの文の中の計算を同時に進められない、と書いています。離れた言葉どうしの関係を知るにも何歩もかかり、Google の紹介は、歩数が多いほど RNN は学びにくい、と書いています。トランスフォーマーでは、どの2つの言葉も、1回のアテンションで直接つながります。

論文の結果では、英語からドイツ語への翻訳の点数(BLEU。高いほどよい)が28.4で、それまでの最高を2点より多く上回りました。英語からフランス語では41.8で、8つのGPU(計算用の部品)で3.5日学習したものでした。論文は、8つのGPUで12時間ほど学習しただけでも、翻訳の成績でそれまでの最高に届いた、と書いています。Google は、学習が最大で10倍ほど(けた1つ)速くなった、としています(会社の発表)。

言葉の順番は、どうやって分かるの?

アテンションは、言葉どうしを見比べるだけなので、そのままでは、言葉が何番目にあるかが入りません。でも、「犬が猫を追いかけた」と「猫が犬を追いかけた」は、同じ言葉でできていても、意味が逆です(このページで作った例)。

そこで2017年の論文は、RNN も畳み込みも使わないので、順番を使うには位置の情報を入れる必要がある、として、言葉を数の並びにしたものに、何番目かを表す印(「位置エンコーディング」)を足しました。印は、波の形をした計算(サインとコサイン。高校の数学で習う、波を表す計算)で作ります。

論文は、学習で覚えさせる印も試し、結果はほとんど同じだった、と書いています。波の形を選んだのは、学習で見たよりも長い文にも使えるかもしれないから、という説明です。

中は、どんな形をしているの?

入れた言葉(トークン)は、まず数の並びに変えます。それに位置の印を足し、同じ形の層を何段も通します。1つの層は、2つの部分でできています。アテンションで、ほかの言葉の情報を取り込む部分と、言葉ごとに別々に、同じ計算をする部分です。

2017年の論文の翻訳のモデルは、読む側(エンコーダー)と書く側(デコーダー)が6層ずつでした。書く側の層には、読む側が出した結果を見るアテンションが、もう1つ入ります。Google の講座によると、エンコーダーは入れた文を途中の数の表し方に変え、デコーダーはそれを役に立つ文に変えます。論文のモデルのパラメーター(計算に使う数)は、基本のもので約6500万個、大きなもので約2億1300万個でした。

その後、片方だけを使うものも出てきました。Google が2018年に発表して公開した BERT は、名前が「Bidirectional Encoder Representations from Transformers」(トランスフォーマーを使った、両方向の、エンコーダーの表し方)の略で、それぞれの言葉の前と後ろの両方の言葉を見て、文を読み取ります。いっぽう、すでに書いた言葉から新しい言葉を作る、デコーダーだけのものもあります(Google の講座)。

文を書くときは、どう動くの?

1トークンずつ書きます。2017年の論文は、モデルは「自己回帰」で、次を作るときに、それまでに作ったものを入力に足して使う、と書いています。Google の紹介も、デコーダーは左から右へ、1語ずつ作る、と説明しています。最後の層の出力は、次に来る言葉ごとの確率に変えます。

書く側では、それぞれの言葉が自分より後ろの言葉を見ないように、アテンションに目かくしをします(論文の「マスク」)。論文は、こうして、ある位置の予測が、それより前の分かっている言葉だけで決まるようにした、と書いています。Google の講座は、1トークンずつ作るアプリには、こうした一方向のアテンションが要る、と書いています。読む側(エンコーダー)は、前と後ろの両方を見ます。

Google の講座は、大規模言語モデル(LLM)を、何千ものトークンを予測して書き足せる「自動補完のしくみ」とも説明しています。OpenAI の論文によると、2020年の GPT-3 は「自己回帰の言語モデル」で、パラメーターは1750億個、層は96段、一度に読める長さは2048トークンでした。GPT は Generative Pre-trained Transformer(文を作る、前もって学習した、トランスフォーマー)の略です(OpenAI などの研究者の2023年の論文)。

言葉のほかにも使われているの?

写真にも使われています。2020年、Google の研究者たちは、写真を、16×16ピクセルなどの小さな四角(パッチ)に切り分け、それを言葉(トークン)と同じように並べて、トランスフォーマーに入れました(Vision Transformer、ViT)。論文は、もとのトランスフォーマーにできるだけ近い形にした、と書いています。たくさんの画像で前もって学習させると、写真の見分けによく使われてきた畳み込みニューラルネットワークの最高のものとくらべて、すぐれた結果を、より少ない学習の計算で出せた、としています。

声にも使われています。OpenAI が2022年に発表した音声認識の Whisper は、読む側と書く側のあるトランスフォーマーです。音声を30秒ずつに区切り、音の高さごとの強さを時間にそって表した図(スペクトログラム)にしてから入れます。68万時間分の音声と、その書き起こしで学習しました。

2017年の論文も、終わりに、言葉のほかに、画像・音声・動画のような大きな入力と出力にも広げる計画を書いていました。ViT の論文は2020年に、トランスフォーマーは言葉を扱う仕事で「事実上の標準」になった、と書いています。

弱いところはあるの?

長い文ほど、計算が大きく増えます。アテンションは、全部の言葉の組み合わせを見比べるので、言葉の数が2倍になると組み合わせはおよそ4倍、10倍なら100倍になります。Google の講座も、文脈のトークンの数を N とすると、計算の量は N の2乗で増え、さらに層の数とヘッドの数がかけ合わさる、と書いています。

2017年の論文も、とても長い文では、それぞれの言葉が見る範囲を、まわりの決まった数の言葉に絞る案を書いています。その代わり、離れた言葉どうしがつながるまでの歩数は増えます。

確認問題

  1. 問1英語の文 “The animal didn't cross the street because it was too tired.” の “it” が「動物」を指すと、トランスフォーマーが読み取れるのは、アテンション(注意)という計算があるからです。アテンションがしていることは?

    答えと解説

    答え:B ほかの言葉と、この文でのかかわりの強さを比べる

    アテンションは、それぞれの言葉について、ほかの言葉が、その言葉の読み取りにどれくらい影響するかを、数で比べます。“it” は、「疲れすぎ」の文では動物を、「広すぎ」の文では道を強く見ます。距離で選べば “it” のすぐ前の「道」になり、辞書での意味の似かたは、文が変わっても同じです。

    くわしくは → ポイント解説:アテンション(注意)は、何を計算しているの?

  2. 問22017年の論文のトランスフォーマーでは、言葉を数の並びにしたものに、ある情報を表す印を足してから、層に入れます。その印が表す情報とは?

    答えと解説

    答え:C その言葉が、文の中の何番目にあるか

    アテンションだけでは、言葉の並ぶ順番が入りません。「犬が猫を追いかけた」と「猫が犬を追いかけた」のように、順番で意味が変わるので、何番目の言葉かを表す印(位置エンコーディング)を足します。

    くわしくは → ポイント解説:言葉の順番は、どうやって分かるの?

  3. 問32017年の論文のトランスフォーマーが、前のしくみ(RNN)より、学習を速く進められたのは、なぜ?

    答えと解説

    答え:A 言葉どうしの計算を、同時に進められるから

    RNN は、文を1語ずつ順に読み、前の語の計算が終わるまで次へ進めないので、1つの文の中の計算を同時に進められませんでした。トランスフォーマーは、言葉どうしの関係を同時に計算できます。論文では、8つのGPUで12時間ほどの学習でも、翻訳でそれまでの最高の成績に届きました。

    くわしくは → ポイント解説:前のしくみ(RNN)と、何がちがうの?

参考文献と確かめ方

このページは、上の資料をもとにAIが書き、書いたAIとは別のAIが、資料の本文と照らして確かめました(2026年11月8日)。理学の修士号と、高校理科の教員免許を持つ人も読んで確かめてから出しています。数字は、その時点のものです。わかりにくかったところ、誤りのご指摘、解説してほしい用語は、[email protected] へお寄せください。

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